第2回:酒井淳平先生(京都府 立命館宇治中学校・高等学校 教諭)

 

 本校は「Your Link to the world~学んだ分だけ世界が近くなる~」をキャッチフレーズにこれまでにない国際教育を推進することに挑戦しています。IB認定校WWL拠点校でもあり、帰国子女が生徒全体の約20%を占めるなど国際色豊かな学校です。

 

 2018年度入学生より現在のような3年間体系的に組み立てた探究のカリキュラム(校内呼称「コア探究」)の実践を開始しました。原点となったのは校内のカリキュラム委員会での議論です。新しいカリキュラムを考えるに当たって生徒の現状を議論した際、教員の多くが生徒に対して持っていた感想が、「素直で真面目だが受け身」でした。委員会ではこうした現状をふまえて、「より多く(の課題など)を与えるのではなく、生徒が自ら動ける根っことなるようなマインドやスキルを育てることが大事。それができるカリキュラムを作ろう」という意見でまとまりました。「根っことなるマインドやスキルを育てる核になるのは、『総合的な探究の時間』だろう。探究の時間を中心としたカリキュラムを作ろう」。こうして本校の探究(コア探究)は生まれ、教育課程に組み込まれました。

 探究学習を通して、さまざまな力が育ちますし、育ってほしいと思っています。しかし、本校で何より大事にしているのは、「お客様から生産者へ」です。生徒が「与えてもらうお客様」から、「価値を提供する生産者」として、自らよい良い世界を創っていこうと動けるようになることを一番大切にしています。「お客様から生産者へ」は生徒にも繰り返し伝え、行事などもこの視点で振り返っています。

 

 

生徒が生産者に育つかどうかは、教員が生産者であるかどうかで決まるのかもしれないと思うときがあります。教員が探究の指導を通してチームとして試行錯誤しながら高め合っていけるのか、つまり、学習する組織になれるのかどうか。ここが一番の鍵だと思います。

 何ごともはじめからうまくいくわけはありません。生徒が自分で決めたテーマを自ら探究するといっても、生徒のテーマ設定も教員の伴走もはじめは思うように進まないでしょう。そんなときに、一緒に頑張れる仲間を見つけ、チームとなって試行錯誤しながらより良い方法を模索する。もしかしたらこのマインドがもっとも大切なのかもしれません。

 

立命館宇治中学校・高等学校の探究活動について、さらに詳しくお知りになりたい先生はこちらをご覧ください前編後編

(リンク先:内田洋行教育総合研究所 授業実践リポート)

 

次回は外部機関と連携しながら地域に根差した探究に取り組まれている、岩手県立大槌高等学校の鈴木紗季先生にバトンをお渡しいたします。

 


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