第3回:鈴木紗季先生(岩手県立大槌高等学校 教諭)

 

本校は、「大海を航る、大槌(ハンマー)を持とう」というコンセプトの下、(1)意思がある(自立)、(2)仲間とともにある(協働)、(3)逆境から創り出す(創造)の3つを目指す人物像としています。そして、学校設定教科「地域みらい学」をカリキュラムの主軸とし、大槌町と連携しながら三陸地域の復興とその先の未来をリードする高校生を育てる魅力ある学校づくりに取り組んでいます。

 

今年度、文部科学省の地域との協働による高等学校教育改革の推進事業「地域魅力化型」指定校として3年目となりました。この指定を受け、「大槌高校魅力化プロジェクト」の主軸として探究活動がスタート。学校の目指す姿の一つである「生徒一人ひとりの目標が応援され、それぞれの持つ強み(大槌:ハンマー)を見つけられる学校」の実現に向けた3年間を見据えた探究活動を行うに当たり、NPO法人カタリバより3名の魅力化推進員(コーディネーター)を派遣していただき、アドバイスをいただきながら生徒・職員・地域が協働した探究活動を展開しています。

 

生徒自らが探究したいテーマを考え、問いを立て、仮説検証を繰り返し、問いの更新をしていく探究活動は、まさに生徒が自分だけの大槌(ハンマー)を見つけることに大きく寄与しています。しかし、最初から大きなプロジェクトを実践するには、生徒にとっても伴走する教員にとっても難しさがありました。そこで、「まずはやりたいことを1週間だけやってみよう!」を繰り返すことで、「自分でもできる!」という楽しさと自信を実感しながら大きく成長し、探究学習やマイプロジェクトを行う全国の高校生が一堂に会して活動の発表を行う「全国高校生マイプロジェクトアワード」にも複数名がエントリーするようになりました。まさに自分の強みを、多様な人と関わる中で見つけています。

 

これからの学校は、自前だけで生徒を育てるという展開に難しさがあると思っています。「思いきって生徒を手放すこと。地域の方、専門家の方にご協力いただくこと。みんなで協働して生徒を育てる」これが肝要なのではないかと、この3年間の探究活動を通して強く感じています。「生徒と教員」という関係ではなく「同じ問いをフラットに探究し続ける仲間」として考えると、案外、目の前の難しい課題はクリアできるのかもしれません。「教員がスタンスを変えること」が、探究活動を成功させる最大の鍵だと感じています。

 

次回は、地域・学校を巻き込んで、「問い」で生徒の「学びたい」に伴走し、「学び続ける探究活動」「自走する探究活動」に取り組まれている岩手県立盛岡第一高等学校の梨子田 喬先生にご担当いただきます。お楽しみに。

 


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