第5回:太田 稔先生(北海道登別明日中等教育学校 教諭)

 

本校は、2007年に「明日を創る」を開校の精神に掲げ設立された北海道立唯一の中等教育学校です。グローバル教育にも力を入れており、6年をかけて地域社会や世界の課題を自分事として考え、改善に向けて行動を起こせる人材の育成を目指しています。

 

本校の探究活動は、2014年にSGH(スーパーグローバルハイスクール)の指定を受けてから始まりました。全教員が伴走する仕組みや海外フィールドワークなどを整備し、世界の課題を探究する流れで設計。しかし、「世界の課題」が身近な出来事から遠く離れているため、遠いことを調べて遠いところでの解決を提案する「調べ学習」になっているところがありました。

 

SGHでの財産と反省を踏まえ、2019年から始まった「地域との協働による高等学校教育改革推進事業(グローカル型)」では、生徒自身の主体的なテーマ設定と、地域でのフィールドワークや実践を重視。大切にしたのは、生徒自身の内発的動機です。ゴールが見えるテーマよりも、生徒自身が本気で取り組めるかどうかを考えるように促しました。それを地域で実践できるように進めていきます。

 

登別市の市制制定50周年事業とタイアップするという幸運にも恵まれ、多くの生徒たちが地域の方との協働で素晴らしい成果を挙げてきました。地域との協働では、生徒が主体性を発揮できるよう配慮いただいたのですが、一方で、地域からいただくお話の中には、生徒が力を発揮しづらいものもありました。「高校生に負担を掛けない」というお気遣いによるものなのですが、打ち合わせを通して納得していただき微調整を重ね、生徒が企画段階から関わらせていただく協働がいくつも生まれたのです。

 

生徒たちに身に付けてほしいのは、社会や世界におけるプレイヤーとして主体的に参画する「明日を創る」マインドセットとそのための資質です。「無批判かつ他人事」ではなく、現状に課題意識を持てるかどうか、行動に移せるかどうかの2つの要素がプラスになる状態を「『明日を創る』マインドセットがある状態」だと考えます。とんがる生徒が育つ一方、自分の探究に満足できない生徒がいるのも事実です。しかし、探究で輝かなかった生徒が卒業後に探究的な営みを始めるケースが多々あります。

 

学校や地域が異なれば、やり方も変わっていきます。しかし、どの学校にも必ず生徒がいて、地域があります。生徒や地域に合った探究の方法を考え続けることが大切です。また、学年によっても生徒の状況は変わります。私自身、生徒や状況に合わせて毎年やることを変えています。「正解」はどこにもありません。学校が目指すものと地域が目指すものも同じではありません。地域や環境の中で目の前の生徒がどうしたらより育つかを考えていくとよいですね。

 

次回は、地域を題材に探究に取り組まれている札幌市立藻岩高等学校の長井翔先生にご担当いただきます。お楽しみに。

 

 

Institution for a Global Society株式会社 教育事業部