第7回:内田大資先生(北海道静内高等学校 教諭)
本校は「静内でかなえる! 地域に愛され地域になくてはならない学校」と「静高 PRIDE」を スローガンに掲げている普通科単位制の学校です。2018 年~2019 年に北海道教育委員会推進事業「教科等の本質的な学びを踏まえた主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の視点からの学習・指導方法の改善の推進のための実践研究(SCRUM)」の指定校として授業改善を進め、現在も「授業改善」「観点別評価」「探究」に重点を置き、行動力や創造力、自己管理力などといった「育成すべき10の力」の向上を目指して生徒と一緒に取り組んでいます。
本校で探究活動を始めたきっかけは、人工知能の登場による職業社会の変化や、民間企業で活躍する友人たちとの会話です。「卒業後、生徒が社会で仕事をするには探究力が大事だ」と感じ、授業を「知識集約・暗記型」から「知識活用・価値創造型」へと転換し、探究する機会を生徒と一緒につくり、自分自身も探究力を身に付け、磨いていこうと始めました。
探究学習元年となった2019 年は、探究の勉強と授業経営という自転車操業で、恥ずかしながらまったく余裕がありませんでした。担当する地理歴史・公民科で「仲間や実社会の方々と協働しながら地域の課題探究を目指す課題探究型学習」とうたったことから、協働するパートナーとなる役場と打ち合わせを重ね、「町の商業施設の利活用案検討」という課題依頼をいただきき、スタートしました。試行錯誤しながらも 約4カ月後に役場にプレゼンテーションを行ったのですが、私の情報収集や 整理分析が十分でなく、説得力に欠ける内容となってしまいました。
この探究学習に取り組んで学んだことは、現実社会の課題探究、実際に地域に出たりオンラインで地域外の方々へインタビューをしたり、実社会で活躍している大人との出会いという本物に触れ合う実体験と、理数・情報科目との教科横断や思考ツールを活用した整理分析の大切さです。整理分析については、情報科と地理歴史・公民科との教科横断で、マンダラート、座標軸(マトリクス)、ベン図、ピラミッドチャートなどの思考ツールを活用しました。。これは私の担当教科でも行っており、何度も何度も繰り返すことで思考ツールを目的に合わせて使いこなせるようになることを目標に置いています。何よりもこうした取り組みによって、主人公である生徒の好奇心を刺激し、夢中にさせることの大切さを学びました。
生徒に身に付け、磨いていってほしい力は先述の探究力ですが、同世代だけではなく異世代との協働によっても行動を起こし、創造と解決ができる人になってもらいたいです。そして、トライ&エラーをしながら自ら学び続ける、自律できる人になってもらいたいです。そのためにも私自身、生徒と一緒にこれからも探究し続けます。
私も探究に関しては発展途上の見習い中ではありますが、どのような生徒になってほしいか、どのような力を身に付けてほしいかということが最大の目標であり、探究学習自体はあくまでも「目標達成のための手段」 という考えを持っています。
最近は、参考になる探究学習の事例は多いですが「これが正しい」という絶対解はなく、目標達成のための最適解・納得解を、目の前の生徒と一緒にスモールステップで探究・支援していく必要があるのではないでしょうか。主人公が生徒であることを念頭に、まず、一歩を踏み出し、始めて、続けることでしか見えない景色があるかと思います。
Institution for a Global Society株式会社 教育事業部