第11回:内野正幸先生(城北埼玉中学・高等学校 教諭。入試広報部、フロンティアコースカリキュラムマネージャー)

本校のフロンティアコースでは、「一緒に働きたいと思われる人間になろう」をテーマに、成熟した大人になるための土壌を用意。圧倒的な数のフィールドワークと協働学習を中心に学びを進めて3年目となります。

また、「時代に合った教育の実践」を掲げ、各学年に1クラス設定。総合的な学習や探究型学習を学校全体で取り組むうえでのモデルケースとなるべく実践・検証を積極的に進めています。カリキュラムの内容やその進め方もコースを担当するチームに一任されているため、手探りではありつつもやりがいはあります。

これまで社会問題や環境問題、地域の問題などに取り組んできましたが、その中で「幸せとは何か?」「みんなが幸せになるためには何が必要か?」を考えるようになり、「衣食住」を探究する現在の「WELL Program(Wear、Eat、Live Learning  Program)」にたどり着きました。

本校のある埼玉県に関する地域探究では、地元の川越を知る「川越学」の他、羽生の藍染、毛呂山の桂木柚子、嵐山の森林保全活動に取り組み、それぞれの活動を通して環境保全や少子高齢化、労働力不足、食料自給率問題などを自分事として捉え、企業や外部団体と協力しながらプロジェクトを立ち上げていくことにつなげています。

このように、たとえさまざまなプログラムを実践したとしても、5教科7科目の学習内容をSDGsに当てはめるだけでは何の意味もありません。地域の問題を自分事として捉え、問題発見や問題解決に向かって行動できる青年を育成するにはどうすればよいか、まずは教員が率先して生徒と一緒にPBL(課題解決型学習)に取り組む必要があると思います。

また、はじめからうまくいくと分かっているプログラムを設定しても意味は薄く、むしろできるかどうか分からないものだからこそ面白いはずです。実際、これまでも「これは失敗だったかも」というプログラムはいくつかありましたが、その経験が後の別のプログラムで生きることも多く、今では生徒も教員も「無駄なことなど何もない」という気持ちで前向きに挑戦しています。

また、プログラムはその内容だけでなく学ぶタイミングも重要です。受け取る生徒側の準備が不十分ではうまくいくはずがありません。そこで、本校では探究プログラムの年間計画を細かく立てないことにしました。生徒の学ぶ意欲の高まりを見極めながら、生徒が意味を感じやすいタイミングでプログラムを実施しています。

生徒の思考を深めるためには多様性ある環境も重要です。フロンティアコースは生徒を学力で選抜していませんし、異学年交流型のプログラムもたくさん用意しています。成長段階や嗜好もバラバラな中で互いの学びを高めていくことを重視してきたことで、結果として「先輩から後輩が学ぶ」環境も整い、先輩が志半ばで終えたプロジェクトを後輩が引き継いで取り組むこともありました。最近では、教員が生徒に助けてもらうことも増えてきましたが、そんな主体者となりうる生徒を増やしていくためには、教員が先入観を捨てること、そして何より生徒だけでなく教員も楽しみながら探究し続けることが大切だと思います。

次回は、広島県立広島叡智学園中学校・高等学校の向井惇子先生にご担当いただきます、お楽しみに。

 

Institution for a Global Society株式会社 教育事業部