第14回:松岡弓弦先生(近江兄弟社高等学校 ASC(Arts & Science Class)指導部長)

 

本学園は、ウィリアム・メレル・ヴォーリズとその妻・一柳満喜子によって1922年に創立され、生徒が自分のためだけでなく社会や人のために何ができるかを考え、奉仕の心と正義感をもって行動できる人間に成長してほしいという願いから、聖書の言葉である「地の塩・世の光」を学園訓として定めました。

ヴォーリズの精神を受け継ぐ学び舎である本校では、探究学習を通して、伝道者、建築家、製薬会社、病院、学校と、多岐にわたる事業を起こして近江八幡の発展に寄与したヴォーリズの生き様に学び、地域・社会に存在する課題を発見し、他者と関わり協働して困難を乗り越える力を育てたいと考えています。

本校の「アーツサイエンスクラス(ASC)」では、地域の課題発見と協働による解決策の模索に向けて、まずは「聞く力」を鍛え、その力に基づいた「伝える力」を養成するプログラムを、「アーツサイエンスリーダーシップ(ASL)」という学校設定科目のなかで段階的に配置しています。これと並行して、LHRの時間を活用した1・2年生縦割りのグループ活動「Vories Sustainable Action(VSA)」という取り組みも行っています。

LHRでの1・2年生縦割り活動は、2017年度に行われたコース制改変に伴って始めたものですが、当初は、1・2年生の交流やブレイン・ストーミングの体験を目的とした1回完結の活動に充てていました。しかし、1単位×3年間で行うASLが、3年生の卒業論文提出を目指す個人の興味や関心に根差した探究活動として一定の成果を積み重ねていたなかで、LHRの活動目的に変更を迫られました。そこで、2021年度から問いを発して地域の課題を発見し、他者と協働して解決に参画する活動を行うVSAがスタートしたのです。

VSAでは、1・2年生混成の5~6名1チームで、1年かけて自分たちに可能なアクションを考えます。はじめに、すでにアクションを起こしている地域の実践者や若手の卒業生や大学生などで取り組みを始めている人の講演を聞き、自分たちに取り込める要素を考えます。そして、課題を見つけてアクションを考えるに当たって、アポイントを生徒自らが取ってフィールドワークに出かけ、外部の方々と一緒に解決策を考えたりアドバイスをもらったりするよう誘導。これらの活動を通して、課題を「自分事」として主体性をもって問題解決に当たる姿勢を作っていきます。

あるチームは、廃棄される鮭の皮を食用にできないか検討するため、スーパーマーケットで廃棄の実情を探り、街中のカフェの経営者と再利用法を考え(油で揚げてチップスに!)、学童保育所で子どもたちに試食をしてもらって反応を確認していました。

300名以上の生徒が参加するプログラムなので、一人ひとりを漏れなく「自分事」として向き合わせるのは至難の業です。しかし、50チーム余りの中から5チームでも10チームでも、自ら外部の人たちと関わりを持つために外に飛び出し、課題と真剣に向き合う生徒が出てくれば、そして、学校としてその仕掛けを継続していけば、その芽は生徒集団の中で確実に根付いて大きくなっていくはずです。

学校の中での学びは、非常に限られているということを教師集団が認識して、思い切って生徒を外に飛び出させる。本校の創設者ヴォーリズの精神に、少しでも近づくためには絶対に必要なプロセスだと思っています。

 

次回は、日出学園中学校・高等学校武善紀之先生にご担当いただきます。お楽しみに。

 

 

 

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