第18回:佐藤伸郎先生(福島県立福島西高等学校)

 

本校は福島県の中通り地方の北部に位置する福島市にある高校です。生徒は毎年、地元の福島大学を中心とした国公立大学に20名程度進学しています。良くえば手のかからない生徒が多い学校、言い換えれば平凡な学校」である本校が、数年で県内トップクラスの探究活動を牽引する学校に成長を遂げたのは、働き方改革×SDGs×生徒への信頼」の化学反応によって生徒の主体性を引き出すことにつながったためです。

 

本校の探究活動を通して育みたい資質・能力は以下の8つです。

社会の状況の変化やその課題を理解する
物事を論理的に考える
他人の前でも臆することなく自分の考えを発信できる
仲間と協力・協働する
取り組みを計画性をって進める
自分の役割を見つけ、全力で取り組み、自信を持つ
考えの違う意見を受け入れ、思いやるあたたかさを持つ
社会を支える当事者としての意識を持ち、地域や世界の未来を真剣に考える

 

われわれ教員は多忙です。新たに探究を始めようとしても、その理念は理解できてもお互いになかなか思うように協力し合える時間をもてないのが実情ではないでしょうか。「教科指導はできても探究の指導などできない」と思う先生も少なくないはずです。自分たちが高校生の時に探究などなかったわけですから、いきなり始めることができなくてもある意味、仕方ありません。

 

そこで導入したのが、生徒だけで探究ができる仕組みです。まず、3年分の授業指導案とワークシートを作成しました。それを毎時間、グループリーダーとなる生徒に渡せば、教員が不在でも探究が自然に進みます。活動内容はすべてPBLProject Based Learning、課題解決型学習)の繰り返しで〇月〇日にポスターセッションを実施する△月日に課題解決のために実践した動画の視聴会をする」といったように期限を必ず設定しています。忙しいのは教員だけでなく、生徒部活動や宿題、学習塾などで忙しく、「いつまでに何をやる」というように期限を決めることが重要です。グループ全員のスケジュールが合わない中でもICTを活用しながら、どうにか期限に間に合わせようと努力することによって、21世紀型のコンピテンシーが身に付いていきます。

 

よくある生徒からの質問は「期限に間に合わなかったらどうすればいいですか?」です。この必要への回答は「なぜ間に合わなかった、その理由を発表してください」です。どのグループも必ず期限までに課題を完成させてきます。

 

また、学校全体の探究のテーマSDGsにしました。なぜなら現在SDGsの目標になっている全ての課題には完全解がないからです。教員向けの探究ガイダンスで言いました。「世界の偉い指導者たちが集まっても解決できなかった17個の課題を大人たちが指導して解決できるわけがありません。高校生の柔軟な発想に任せましょう」と。

 

そこで必要になるのが生徒への信頼です。生徒たちに全権を移譲します。生徒向けのガイダンスで「学校の中だけでなく、実社会に出て課題を解決してきてください。思い切って行動してください。何かトラブルがあったら校長先生が全ての責任を取ってくれますと伝えました。

 

われわれ教員は基本的にまじめなので、生徒にすごい探究をさせよう」「立派なアウトプットをさせたい」指導してしまいます。探究教科と同じで、できる生徒もいればできない生徒もいます。まして完全な解がありません。結果ではなく過程に意味があるのです。

 

次回は、札幌新陽高等学校 校長 赤司展子先生にご担当いただきます。お楽しみに。

 

 

 

 

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