第19回:赤司展子先生(札幌新陽高等学校 校長)

 

本校は、1958年に荒井⿓雄氏により札幌慈恵女子高等学校として創立されました。以来、建学者の意思であり校訓でもある「自主創造」の理念の下、2016年からは「本気で挑戦する人の母校」をスローガンに、さまざまな改革を進めてきました。

今、私たちは変化の激しい時代を生きています。人生100年時代といわれ、ライフプランを直線的に描けた時代は終わりました。これからを生きる生徒たちは卒業後、いくつもの仕事をしたり何度も学び直しをしたりするマルチステージの人生を歩んでいくことでしょう。そこで特に必要となる資質・能力は、自分らしく生きるために自ら学ぶ力と、多様な他者と協力して新たな価値を創る力だと思います。

2018年に新設した探究コースでは、「生きたいように生きる力」を育むことをミッションに、PBL(Project-Based Learning)を軸とした実社会とつながる教育課程を実現。生徒は多様な進路を自分で切り拓いています。他のコースでも探究型学習に取り組み、特に校内外での活動や多様な人と触れ合う機会を大切にしてきました。この「出会いと原体験」こそ、自分を突き動かす原動力となり、探究へとつながると考えているからです。

また、2021年にはスクール・ミッション、スクール・ポリシーに加え、2030年に向けたヴィジョンをあらためて整理しました。生徒が学ぶ環境のすべてがこのミッション・ポリシー・ヴィジョンを基にデザインされるべきであり、教員間はもちろんのこと、生徒ともしっかりと共有して取り組むことが大事だと考えています。特に、新陽ヴィジョン2030「人物多様性」は、サステナブルな社会を目指して生徒・教職員・社会が協創することを目指して策定しました。コース別学年制から単位制へと移行したことを機に、このヴィジョンを授業や行事など具体的な活動に反映することを意識して、単位制のカリキュラムを作成。また、これまでの各コースの特色や経験を引き継ぎながら、生徒の個性や得意な学び方をより一層伸ばせるよう、選択肢のあるカリキュラムと、生徒が互いに多様性を生かし合える教育活動を設計しています。

探究は、総合的な探究の時間だけで行われるものではありません。疑問や興味をもったり、課題を発見したり、生徒の探究心や創造性に火がつく瞬間はいつ起きるか分かりません。だからこそ、生徒の心に火がつく機会をたくさん準備すること、そして、火がついた瞬間を逃さずに灯った火を消さないようにすることが重要です。「出会いと原体験」や単位制は、そのための取り組みでもあります。

ヴィジョンを実現するカリキュラムをデザインし改善し続けるためにも、教職員自身が探究的で創造的であることが重要です。そこで、校内研修や公開授業研究会の他、教職員の対話の場「中つ火を囲む会」を定期的に開催し、教員同士で学び合う機会を設けています。

本校のスクール・ミッションは「本気で挑戦し自ら道を拓く人の母校。常に新たな改革に取り組み、高校教育を再創造する」。本校の取り組みが少しでも読者の先生方のご指導のお役に立てればと思っています。関心をおもちの先生は、ぜひわれわれの学び合いの場にご参加ください。いつでも歓迎いたします。

 

次回の「探究への道」をご担当いただくのは、東明館中学校・高等学校です。お楽しみに。

 

 

 

 

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