第21回:山元祐輝先生(東明館中学校・高等学校 教諭)

 

本校は、佐賀県の東端に位置し、福岡県と隣接する基山町にある私立の共学中高一貫校です。生徒のWell-Being(ウェルビーイング)の実現のために「好学愛知・自律自啓」という校訓から Society 5.0 に必要な「自律・自走/相互承認/創造」を育んでいます。

 

本校では、2020年度に探究コースを新設し、ほぼすべての科目を何かのプロジェクトに合わせて学習していくPBL(Project-Based Learning)によって知識を活用しながらさまざまな実践を行ってきました。例えば、基山町の町おこしプロジェクトを通じて、地域課題の解決や地域住民とのコミュニケーションの大切さを学んだり、一般社団法人Cancer XとPodcastを利用してコラボレーションをしながら世界的な問題である人権や医療についても取り組み、人権について紹介する絵本を作成したりと、探究活動を通してグローカルな視野を広げることができたと思います。また、2021年度からは、認定NPO法人テラ・ルネッサンスと「ウガンダの元子ども兵の社会復帰支援」「カンボジアの地雷被害者の自立支援」を題材として、協働プロジェクトを実施してきました。

 

これまでの学習方法に疑問をもつ生徒や、これからの社会の変化に向けて新たな価値を創造する力を伸ばしたいという思いを抱いて入学する生徒が多い探究コース。生徒はPBLを通して、自己表現力や問題解決力を養い、自己成長や自己実現のための能力を身に付けるだけでなく、コミュニケーション能力、対話的手法を用いた合意形成する力、協調性やリーダーシップ、創造性など、これからの社会で重要とされる能力をしっかりと身に付けていってくれているようです。

 

今後、テクノロジーがますます進化し、AIやロボットなどが人間の仕事を代替することが増えると想定されます。その一方で、人間がもつ感性や創造性、エンパシーといった能力が重視される社会になるともいわれています。そのような社会で生きていくためには、自己実現や自己成長を促す学びが重要であり、それを通して自己表現力や問題解決力、多様な他者とコミュニケーションできる能力を身に付ける必要があると思います。探究活動は、そのような未来の社会に必要な力を身に付けるために非常に有効な学びの手段の一つです。

 

2023年度からは、探究コースを含め本校にもともとあった3つのコースを廃止し、新たに総合選択制をスタートしました。これにより、入学前のコース選択や文理選択によって起きるミスマッチングの解決と自己決定の機会を増やすことができます(詳細はWebサイトに掲載)。すべては生徒のWell-beingの実現のために「私たちができることは何か?」を問い続け、これからも積極的に実践を重ねていきたいと思います。

 

※東明館高等学校23年4月スタートの「総合選択制」について

http://www.tomeikan.ed.jp/bunri

 

次回は、以前ヨーロッパでご一緒した追手門学院中学校・高等学校の金 崇裕先生にご担当いただきます。ぜひお楽しみに。

 

 

 

 

Institution for a Global Society株式会社 教育事業部