第23回:野崎浩平先生(土佐塾中学・高等学校

 

本校は、高知県の進学塾「土佐塾」が、「教育は、智・徳・美・体にわたる、全人教育を通して行われるべきである」という考えに基づいて、1987年に高知市内が一望できる緑に恵まれた山の上に開校しました。

 

2021年度より、創造活動・探究型学習を行い、生徒一人ひとりに個別最適化された学習環境の提供を目指す「まなび創造コース」をスタートさせました。社会環境が凄まじい勢いで変化するなか、全国や世界へと視野を広げられる学びや体験を提供していきたいという考えに基づき、生徒が「自学自走」できる探究型学習を中心にコース設計をしています。

 

この「まなび創造コース」では、定期テストは実施せず、1・2学期末は、保護者と教員に対して自ら取り組んだ学びについてプレゼンテーションをすることが課題になっています。また、学年末には、1年間取り組んだことを広く伝える学年末エキシビションを実施。自分で取り組んだことを他者に伝える機会を定期的に設けています。これも生徒の「やりたいことに向き合う」姿勢と「自分の手でやってみる」行動をどうすれば最大化できるのかを意識して設計した取り組みです。

 

やりたいことに向き合える生徒は、息を吸うようにアイデアを出し、取り組み始めることができます。たとえば、「『まなび創造コース』のことを伝えるInstagramの運営を始めたい」という提案から運営までを行う生徒がいたり、「掃除当番表を自動化するプログラムを設計したい」と提案し、自らコードを書いてクラス運営に携わる生徒がいたりします。しかし、自由度を高めすぎてしまうと、最初の一歩が踏み出せず、自分のできることだけに踏みとどまってしまい、自ら進めることが難しい生徒が出てくることに気付きました。

 

こうした生徒の様子をふまえて、今年度からは探究の時間を「ゼミ制」にしました。大枠のテーマを教員で設計し、生徒は各テーマについて教員が行うプレゼンテーションを聞き、所属するゼミを決定します。私が設定したアントレプレナーシップを身に付けるゼミでは、半年間のプログラムのなかで外部講師による講座やメンタリングの時間を取りながら、一人ひとりがやりたいことに向き合い、生徒自身が自らの手でサービスを構築するところまでの流れを経験できるようスケジュールを組んでいます。実際に行ってみたところ、生徒との間で「共通の言語」をもつことができ「ペルソナってどんな人だっけ?」や「その言葉の解像度を上げてほしい」という言葉に対しての認識のズレが減ってきました。言葉に対する認識のズレを擦り合わせる時間が大幅に減った結果、生徒が活動する時間が増え、生徒が手を動かす時間が増えたことで新しい疑問にもたどり着けるようになるなど、教員と生徒との間で言葉の共通認識をもつことは、頭で想像していた以上に、探究活動を進めるうえで効果があると感じています。

 

また、私自身もプログラムに沿って生徒と一緒に探究活動に取り組み「あらためて自分のしたいことは何だったっけ?」と問い直しています。生徒に課したワークシートを、私自身も同じタイミングで取り組み、アウトプットするときは私自身も生徒たちに混ざって伝える。そうすることで、生徒の刺激となり、私自身の思考を整理する機会となっています。教員も探究をする側に周り、生徒たちと一緒に探究に取り組むことは、探究活動をうまく進めるコツではないかと感じています。その活動の中で「学びのセカンドオピニオン」という言葉がふと頭に浮かびました。これを軸にして何か形にできないか検討し、音声プラットフォーム「Voicy」のパーソナリティーに応募をしたところ、選考を通過。チャンネルをもたせていただくことができました。こうしたストーリーも生徒と共有しながら、「自分の手でやってみる」ことの大切さを一緒に味わっています。生徒と混ざって同じタイミングで一緒に探究をやってみることをお勧めします。

 

※土佐塾中学・高等学校のHPhttps://www.tosajuku.ed.jp/                

※土佐塾中学まなび創造コース1期生のInstagramhttps://www.instagram.com/manabi103109/

※野崎先生によるVoicyチャンネル『のざたんの「学びのセカンドオピニオン」』:https://voicy.jp/channel/3708

 

次回は、東京都の聖学院中学校・高等学校の山本 享先生にご担当いただきます。ぜひお楽しみに。

 

 

Institution for a Global Society株式会社 教育事業部