第25回:加藤利光先生(日本大学三島高等学校・中学校)

 

日本大学の付属中高一貫校である本校は、付属校の中で最大の生徒数を誇り、現在約2000名の生徒が在籍しています。「自由と規律」の校訓の下、2022年度より4つのコース制を導入。スクール・ミッションは、「多様なフィールドでリーダーシップを発揮できる人材を育成する」です。

 

【育成を目指す資質・能力】

 コース制を導入し、探究を本格始動させる1年前。当時担当したクラスの7割の生徒が「将来やりたいことがない」と嘆き、就職活動中の卒業生が「(企業の選択に困り)勉強だけでなく、色々と体験をしておけばよかった」と嘆くのを目の当たりにし、私自身の探究心に火が灯りました。生徒の悩みの解決に向け、やりたいことよりも「ありたい姿」を探究していくことに重点を置くことに決めたのです。さまざまな活動を通して他者と関わり、自分を見つめ、自分らしさに気付き、人生を熱狂するための資質・能力を育みたいと考えています。

 

【探究活動のポイント】

 昨年度の高校1年生から探究が本格始動しましたが、授業の実施方法には悩みました。探究の授業は土曜日に設定されており、全11クラス、生徒数にして400名以上の大所帯。しかも、部活の大会の引率で出張の先生も多いため、クラス担任主導ではなく、私が生徒全員を一手に担う決断をしました。結構スリリングな取り組みであり、最初は生徒のリアクションの薄さに驚愕したことを鮮明に覚えています。(もちろん、他の先生方のサポートはありました)

 何よりも重視しているのは、「手作り感」です。安易に外部任せにせず、あくまでもわれわれ教師が一から授業を作り、「探究=楽しい」と思える環境をつくる努力をしています。また、集団意識が大切であると考え、チーム・ビルディングに多くの時間を割いたり、ある程度のテーマを設けたうえで自己選択の機会を作ったりして、やらされ感が出ないように工夫しています。

 

【探究の設計と当時のエピソード】

 高校1年生の最後の活動として、仕事をテーマに4か月間におよぶ課題解決型学習を実施しました。生徒はクラスの壁を越えて自身の興味・関心に基づいたチームを結成し、行きたい企業に訪問。さらに、その体験を元に、企業の方と保護者を招待して実施したポスターセッション形式の発表会は、緊張感溢れる見事なできだったと自負しています。新たな出会い、自由度の高さが生徒には好評で、この体験を機に1年次の目標である「自分らしさを言語化する」が達成できたという声が上がりました。(80社もの企業へのアポイント設定は想像以上に大変でした)

 探究2年目となる今年度はそのまま持ち上がりで高校2年生を担当しています。今年度は「プロジェクト4」と銘打ち、「日本大学連携(ロボット)」「地域活性化」「社会問題解決」「起業」をテーマに、外部の方と連携を図りながら1年計画で奮闘中。共感してくださる先生方と探究チームを結成し、探究という答えのない問いに対して生徒だけではなく、先生方も一緒になって試行錯誤できる学校になっていることが何よりも幸せです。

 

【読者の先生方へ 】

 探究活動が本格始動する前は、探究の授業は担任裁量でした。計画性がなく、その場しのぎ感はぬぐい切れませんでした。そのようななかで、生徒の「やりたいことがない」との嘆きを受け、クラス単位や有志という小さい集団から小さな挑戦を始めました。仕事探究(講演会)、世界一周を果たした旅人との世界の写真展、徳之島プロジェクトなどといった試みです。

 その一歩が、本校の探究の礎になり、私の人生までも躍動させました。まさに今、人生に熱狂しています。生徒にも探究を通して同じような体験をしてほしい。そのためにも教師こそ、やりたいことを実現する一歩を踏み出すべきだと思いませんか?

 

徳之島プロジェクトの活動記録 facebook:https://www.facebook.com/nm.tokuno/

自分らしさに気づき生徒が起業した記事:https://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/10373

 

次回は、東京都のかえつ有明中・高等学校の深谷 新先生にご担当いただきます。ぜひお楽しみに。

 

 

 

Institution for a Global Society株式会社 教育事業部