第32回:安田 雄貴先生(横浜国立大学教育学部 附属鎌倉小学校

本校は、同じ敷地にある横浜国立大学教育学部 附属鎌倉中学校とともに、「自立に向けてたくましく生きる」という小中一貫の教育目標を掲げ、「子どもの姿」を大切に日々教育活動に励んでいます。

子どもたちには誰かにやらされるのではなく、自分の「やりたいこと」を自分で見つけ、それに対して自分の責任で真剣に取り組んでいってくれることを願っています。そのためには、まず、子ども自身が夢中になって真剣に取り組める何かを見つけることが大切になります。転ばないように手を差し伸べるというよりは、転んでもかまわないから自主的に思い切りやらせてみること、また、転んだときには、失敗をたたき台として検討・修正し、達成感へとつなげていけることを意図して児童と接していきます。そして、自主の心が芽生えてくる中で、徐々に自律的に考え行動できるようになってほしいと考えています。

本校の特色のある行事の一つに「お弁当の日」という探究活動があります。「お弁当の日」とは、月に1度程度、子どもたちが教室での学びを広げたり、深めたりするために、自分たちで「行き先」や「活動内容」を決め、お弁当を持って教室を飛び出し、教室の中ではできないダイナミックな学びを体験する日のことです。

今回は、昨年度担任をした1年3組の子どもたちとの「お弁当の日」についてご紹介させていただきます。

「お弁当の日」の計画は、まず自分たちの学びを振り返るところから始まります。「国語で登場人物の気持ちを考えたよ!」「算数で空き箱を使ってカタチ作りをしたのがおもしろかった!」「体育のボール蹴り遊び、もっとやりたかったな!」など、みんなで学びを振り返る時間は、1年生の子どもたちにとって、自分の成長に気付くことのできる機会でもあったと感じます。

そして、次に、「もっと知りたいこと」や「気になること」についての話へと展開していきます。「音楽で鍵盤ハーモニカをやったけど、どうして音がでるのだろう?」「漢字ってどうやってできたのかな?」「冬はどうして木の葉が枯れているのかな?」教室の中での学びだけでは、解決できなかった課題や疑問、もっと知りたいというような興味・関心がたくさん出てきます。

たくさん出てきた「知りたい」「やってみたい」の中から、今の自分たちがもっとも探究したいテーマを絞り、その思いを達成することのできる「場所」や「活動」ができる場所を調べて、当日の活動へと向かっていきます。

より具体的にお話しをすると、生活科の学習の中で、身の周りの生き物について学びを広げた子どもたちが、海の生き物に興味をもち、6月には新江ノ島水族館に行きました。さまざまな海の生き物について学んだ子どもたちは、今度は、海の深いところ(深海)について興味をもちました。そこで、1月には海洋開発研究機構(JAMSTEC)に行き、深海でプラスチックのゴミが問題になっていることを目の当たりにしました。そして、2月に行われた学習発表会(鎌小LIVE)では、参加者の皆さんに海の生き物や海底のプラスチック問題に興味をもってもらえるよう、また、ものを大切にする気持ちをもってもらえるようにと考え、「いちさん深海水族館〜いらなくなったものをもう一度輝かせよう!」というテーマのもの、廃材だけを使用したワークショップを開催しました。

まさに、自分たちで「やりたいこと」を見つけ真剣に取り組んでいる姿、日常と学びとを往還しながら繰り返し探究している自然体な学びの姿に出会えたように感じました。

「教師の仕事の多忙さ」をよく耳にする昨今、日々さまざまなものに追われ、教師である私たち自身が「やりたいこと」ができない現状もあると思います。そんな中でも、「教師の都合」よりも「子どもの思い」を大切に、「子どもの姿」に目を向け、「子どもの声」に耳を傾けることのできる時間を少しでも増やしていくことができるよう私たち鎌倉小・中学校の職員も試行錯誤の毎日を過ごしております。

もしお時間がございましたら、10月に開催を予定しております本校の研究発表会にお越しください。「子どもの姿」を見ながらともに熱く語ることができますことを楽しみにしております。

横浜国立大学教育学部 附属鎌倉小学校
https://www.kamakurasho.ynu.ac.jp/


次回は、星城高等学校の城戸 孝之先生にご担当いただきます。ぜひお楽しみに。

 

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