第33回:城戸 孝弘先生(星城高等学校)
本校は、1963年に愛知県豊明市に開学し、今年で創立62年目を迎えました。建学の精神「彼我一体」の下、礼節・進学・スポーツ・国際交流を柱に、「“感謝のできる”実践力に富んだ逞しい人間の育成」を目標に教育活動を展開しています。
本校の探究活動は、平成27年度にSGH(スーパー・グローバル・ハイスクール)アソシエイト校の指定を受けた頃から本格的に始まりました。グローバルな視点での学びを展開する中、その内容の多くが地元の地域社会が抱える課題と密接に関係していることに気付きました。そこで、令和元年度からは「地域との協働による高等学校教育改革推進事業(グローカル型)」の指定を受け、グローバルな視点での学びをローカルな視点での地域活動につなげていくグローカルな学びを展開。さまざまな社会課題を自分ごととして捉えて活動する「主体性」と、周りの人々を巻き込みながら課題解決に向けて活動する「協働性」を育成ポイントに掲げています。また、いわゆる探究のサイクルの前に、「興味・関心のある社会課題との出会い」を大切にしています。
そこで、海外派遣先にいるJICA(国際協力機構)職員から生中継で直接、話を聞いたり、国際交流協会や社会福祉協議会の職員から地元地域の多文化共生や健康福祉に関する話を聞いたりする機会を設けるなど、社会課題に取り組む現場の人々の生の声を聞かせることを重視。これらは社会課題に対して興味・関心をもつきっかけとなり、社会課題を自分ごととして捉えることにもつながるはずです。また、机上の空論ではなく、課題解決に向けて実際に動いてみることで、失敗も含めて多くの学びが生まれることを期待し、本校の探究活動には基本的に課題解決に向けたアクションを組み込むようにしています。こうした仕掛けが「自分たちは社会課題を解決する当事者だ」という意識の芽生えにつながることを期待しています。
地域協働を軸にカリキュラムを開発する際、地元の自治体や公共団体、企業などとコンソーシアムを構築して探究活動を設計しましたが、このコンソーシアムの協力関係をうまく成立させるためには、関係各社などとのWin-Winの関係性を明確に提示することが重要であることを経験から学びました。例えば、国際交流協会とコラボし、外国籍児童のための「子ども日本語教室」に生徒がボランティアとして参加した際、高校生が加わったことで外国籍児童の日本語学習への取り組みが顕著に向上したという報告をいただいたことがありました。これは国際交流協会にとってメリットがあったといえます。一方で、生徒は「子ども日本語教室」の体験を通して、国際交流協会の職員や外国籍児童に多文化共生の実態を取材することができ、課題設定や情報収集を積極的に進めることができました。最終的には、生徒が地元地域の歴史・文化・名所などを題材にしたオリジナルの日本語学習カルタを制作し、「子ども日本語教室」における課題解決を実践することで、地元への愛着を高める日本語学習支援というアクションにつながったのです。このような地域協働におけるWin-Winの関係をいくつも築いていくことが、グローカルな学びを後押しすることにつながると考えています。
グループ学習の形態をベースしている本校の探究活動において、常に注視しているのは、私たちが「フリーライダー」と呼ぶ生徒の有無です。これは、グループ内の他のメンバーに探究活動の取り組みを任せてしまい、自分はグループの取り組みに追随するだけの生徒のことを指します。探究的な学びの内容や進め方は学校によってさまざまですが、どの教員も生徒が主体的に活動することを望んでいるはずです。どうすれば「フリーライダー」の生徒がいない探究活動にできるかに焦点を当てながら探究の授業計画を考えるのもよいのではないでしょうか。
星城高等学校「探究ブログ」
Institution for a Global Society株式会社