第36回:大橋優生先生(佐野日本大学中等教育学校)

本校は栃木県佐野市にある完全型の中高一貫教育を行う共学校です。日本大学の付属校でありながら、6年間のカリキュラムの中で、選択肢を幅広く残しながら学ぶことができる利点を生かした教育を日々実践しています。

本校の探究活動では、生徒たちが「あと伸び」するために必要となる学力を支える幅広い力の育成を目標としています。教科を越えて、自分の好きなことについて深く考え、実践することを通して、物事を深く考えたり、多角的な視点で判断したりすることのできる生徒を育てたいと考えています。そのような生徒を育てるために、本校で実践している探究活動の全体像をご紹介したいと思います。まず、探究を深めるためにもっとも重要だと考えているポイントは、生徒間でのコミュニティはもちろん、教員とのやり取りの機会も可能な限り最大化することです。他者とのやり取りの中で、自分にはない視点を得たり、自分にはまったく関係がないと思っていた事柄の中にある関係性に気付いたりと、やり取りを多く積み重ねていくことが探究の深化につながると考えています。

このようなコンセプトの下、本校の探究活動は3つの大きな特色を有しています。1点目は、全教員が自分の趣味や特技を生かした探究テーマを出し合い、そのリストの中から生徒が探究してみたいテーマを選ぶという自由度の高さです。例えば、私の探究グループでは、「新しいパラスポーツを生み出そう」というテーマで日々、さまざまなパラスポーツを実際に体験し、その面白さについて探究しています。他にも、釣り、筋トレ、三味線、朗読、ゲーム、プログラミング、薬、スポーツ、歴史など、テーマは多岐に及んでいます。

そして2点目は、学年の垣根を越えた縦割りのグループで自分の「好き」を共有しながら仲間と探究に取り組んでいるという点です。本校では、探究の時間になると、中1から高3の生徒が担当教員の下に集合し、やり取りをしながら探究を深めていきます。最大で5年という年齢差があるわけですから、ときとして大きなジェネレーションギャップも生じます。しかし、こうした他者とのギャップも探究を深める良いきっかけになるはずです。

最後に3点目は、日本大学との高大連携を上手く活用していることです。オンラインで指導や助言をお願いすることはもちろん、大学施設を実際に訪問するなど、大学の先生方のお力も借りながら探究活動を進めています。こうした、大学の先生という専門家とのやり取りも生徒の探究を深めるうえで欠かせない要素となっています。

今では、他校にはない自由度を有した探究活動と自負していますが、この構築には多くの課題がありました。特に、探究活動を進めるうえで「やり取りの多さ」を鍵とするとなると、可能な限り多くの教員の協力が不可欠になります。そのため、学内でのビジョンの共有が大きな課題となりました。しかし、生徒はもちろん教員も楽しむことを念頭に、お互いの興味や関心をすり合わせることで、今では生徒も教員も楽しめる探究活動の形ができあがりつつあると思っています。「好きこそ物の上手なれ」。これに尽きるのではないでしょうか。


佐野日本大学中等教育学校
https://ss.sano-nichidai.jp/

総合的探究(学習)の時間
https://ss.sano-nichidai.jp/education-content/page-21390/

次回は、宮崎県立宮崎東高等学校 定時制課程夜間部の西山正三先生にご担当いただきます。ぜひお楽しみに。

 

 

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