第38回:神田正行先生(藤村女子中学・高等学校)

本校は、東京の武蔵野市にある中高一貫の女子校で、92年の歴史をもちます。開校当時、まだ世に広まっていなかった女性の社会進出や女子教育に着目し、現在はその精神を引き継ぎつつ、変化を恐れず新しい教育に目を向けています。

生徒には想像を膨らませながら自ら疑問を発見し、その小さな疑問を種に創造力を働かせ新たなモノを考案する力を身に付けていってほしいと願い、本校の探究活動では生徒に培ってほしい力として「想像力」と「創造力」を掲げています。また本校では、未知のモノや現象に対して、「知りたい!」という好奇心をもつことも重要だと考えています。だからこそ、生徒には身の周りの出来事すべてに興味をもち、アイデアを次々に出し、周囲を巻き込みながら大きな動きを生み出す、そんな素敵な力をもって本校を巣立って行ってほしいと願っています。

これらの力を育むためにわれわれ教師が気を付けているのは、答えを事前に探そうとしないことです。仕事柄、授業計画を立て、コマ割りをしていくことが染み付いているのですが、ゴールをあらかじめ知っておきたいという気持ちを抑え、生徒に伴走しながら生徒と一緒に答えを探すことを心掛けています。生徒のアイデアを尊重し、たとえ仮説が崩れても、次の方法を模索する手助けに徹することが重要だと考えています。同時に、生徒には仮説が立証できないことは失敗ではなく、成功への第一歩であるということを伝えています。

また、本校はコース制を採用しており、探究には3つのコースの特徴が詰め込まれています。例えば、特進コースに当たるアカデミック・クエストコースでは、語学を通して「学問を探究する」こと、進学コースに当たるキャリアデザインコースでは、自分自身の将来設計を考えながら「キャリアを探究する」こと、看護・医療系、保育・体育系の進路を目指すスポーツウェルネスコースでは、スポーツをする人やそれを支える人に着目しながら「スポーツを探究」することをテーマに探究を設計し、高校生の視点でアイデアを出しながらそれぞれの専門分野の方々と協動・意見交換する中で、新たな気付きを積み重ねています。また、どのコースに所属していても、生徒は最終的に自身の専門テーマを設定し、卒業論文を執筆します。その際に重要なことは「自己完結させず周囲に発信すること」だと思っています。年度末には、新たに発見したアイデアを多くの人の前でプレゼンすることになりますが、その過程を経て、自信を身に付けていってほしいとも考えています。

「総合的な探究の時間」が必修科目となって以来、生徒の実情に合わせてトライ&エラーを繰り返しながらカリキュラムを構築してきました。学外の方にご協力いただくことが多い学習ですので、たとえ良いプログラムであっても日程の関係で継続が困難になることもあり、何度も壁にぶつかりながら模索を繰り返している最中です。答えは一つではありませんので、新たなアイデアを出し合いながら、われわれ教師も探究心をもって企画に臨みたいと思っています。

すでに探究関連のさまざまな研修で言い尽くされている言葉ではありますが、探究では教師がファシリテーターとして生徒の側に控えることを徹底することで、生徒は飛躍的に力を伸ばすことができると実感しています。伴走と放任は紙一重で、線引きが難しいところではありますが、生徒にしっかりと伴走していると、生徒の好奇心がどんどん広がっていくことを感じます。探究の準備は大変ですが、われわれ教師も未知の世界を楽しみながら、周りの先生方と協力してプログラムや環境を整えていくと、良い探究が必ず生まれると思います。

藤村女子中学・高等学校
https://fujimura.ed.jp/

次回は、長崎県立口加高等学校の冨永絋平先生にご担当いただきます。ぜひお楽しみに。

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