第39回:冨永紘平先生(長崎県立口加高等学校)

本校は長崎県南部の島原半島の最南端の地にあり、創立122周年を迎える県内でも歴史のある学校です。全校生徒は240名弱ですが、普通科普通コース、グローカルコース、生活創造コース、福祉科と県内唯一のコースと学科を設置しています。

普通科普通コースならびに福祉科では1年次に「ふるさと教育」を実施し、地域自治体などからの助言の下、探究活動を行っています。その活動を通して、主体性や行動力だけでなく、地元故郷への愛着や誇り、地域に貢献する力を育みたいと考えています。また、グローカルコースは、Think Globally, Act Locally, Think Locally, Act Globallyをモットーに、地域課題に対してより広い視点でさまざまな取り組みを実施しています。普通科の探究活動に加えて、グローバルなコミュニケーション能力や表現力を育むことが狙いです。

生徒には学校での学習面も含めて、さまざまな刺激を与えることを重視して指導を進めています。発表会やフィールドワーク、出張講義など、普段の学校生活では体験できない機会を与えることで、生徒が自ら考えて、行動するきっかけになることを指導の狙いとしています。例年、発表会は大きなホールを借りて、終日かけて実施しており、今年度は、終日フィールドワークの日を授業日に設定し、地元では触れることができない大学や研究施設の見学へバスを手配して1・2年生全員を対象に企画・実施しました。

1年生では「ふるさと教育」に関わるグループ探究、2年生では自分の興味関心の高いテーマでの個人探究、グローカルコースでは、1・2年生協働の縦割探究で探究型学習のカリキュラムを設計。1年次の探究は、テーマが故郷のことなので、自分事としてとらえやすく、探究の導入としては適切です。また、地元地域の方々には、探究学習への取り組みにご理解いただき、高校生に積極的に関わってくださるので、学ぶ環境として非常に恵まれています。ここで、培った探究のノウハウを2年次の個人探究に生かし、さまざまな外部コンテストへの参加につなげていきたいです。

2年次では、福祉科、生活創造コース、大学進学を希望するクラス、公務員・専門学校など     を目指すクラスなど多種多様な進路希望をもった本校の生徒らしく、テーマも多岐に渡ってきます。しかし、地元だけでは先行研究が学べないことも多くあるため、ICT機器を活用したリモートでのフィールドワークを現在試行中です。

また、グローカルコースの縦割探究は、あるテーマについて継続的に探究を行うことが可能となり、より深く実践的な研究を行うことができます。これまで培った人脈のおかげで、外部団体からの共同研究の依頼も多くあります。共同研究の活動実績でもある潮流発電の開発やユニバーサルビーチの研究、遠隔操作ロボット「オリヒメ」の活用法など、校外の大人たちと一緒に試行錯誤できる点は、グローカルコースの探究の魅力といえます。

本校の取り組みから先生方に何かアドバイスできることがあるとすれば、生徒を教師以外の大人たちとつながる機会を増やすことが探究活動の活性化につながるということです。そのためにまずは、教師自身が外部と関わることに積極的にならなければいけないと私自身も実感しています。

最後に、今回の寄稿のご縁をくださった宮崎県立宮崎東高等学校の西山正三先生にこの場をお借りして御礼申し上げます。西山先生は、宮崎県立宮崎東高等学校の定時制課夜間部で探究の指導をされており、昨年、本校の探究発表会では講評とパネルディスカッションのファシリテーターを務めてくださいました。西山先生、このような機会をありがとうございました。


長崎県立口加高等学校 グローカルコース
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