第41回:尾嶋智広先生(長崎県立島原翔南高等学校 総合学科企画部)
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本校は有明海と雲仙普賢岳に囲まれた自然豊かな環境にある総合学科の県立高校です。今年度(令和6年度)の生徒数は84名ですが、少人数の強みを生かした手厚いサポート体制を整えており、国公立大学への進学から就職まで幅広い進路に対応しています。
本校では3年間のキャリア教育を通して、自己と社会を理解した上で「どのような生き方をして社会にどう貢献していきたいか」を考えさせ、校訓である「夢に向かって個性を伸ばし社会に有為の人間となる」ことを目標に、社会で必要な能力の育成を段階的に図っています。その集大成として3年次に行っているのが課題研究です。
この課題研究は、地域にターゲットを絞り、身近な社会とつながりながらその地域に貢献することで、課題解決能力の成長を期待するとともに、地元愛と自己有用感を高めることも目的としています。また、われわれ教員は、生徒たちが自ら考え、行動したことが誰かのためになることを実感し、「働くことのやりがい」をイメージできるよう活動をサポートしています。
本校の課題研究では特に以下の2点を重視しています。
1.生徒のやりたいことを出発点にすること
2.外部の大人とつながること
これらについて以下で詳しく説明します。
1.生徒のやりたいことを出発点にすること
課題研究のテーマ設定時、生徒一人ひとりが企画書を作成します。それを生徒同士で相互評価させ、上位に入った企画の中でどの企画に取り組んでみたいかをアンケート調査し、グループ分けを行います。これにより、研究に対するモチベーションと研究の質の両方を担保することができます。
2.外部の大人とつながること
グループに分かれ企画を練り上げた段階で企画発表会を行います。地域の小・中学校の先生、市議会議員の方など多くの方々にご協力をいただき、座談会形式の壁打ちの場では、企画の改善につながる忌憚のない意見を言っていただいています。また、フィールドワークに積極的に出かけ、さまざまな大人と触れ合う機会を確保することにより、物怖じしない行動力や発言力が徐々に身に付いていくとともに、自分たちの活動を客観的に評価できるようにもなっていきます。意欲的に活動するようになった生徒に対しては、地域の方々も快く協力してくださるなど、生徒の素直さと地域の方々のサポートが相乗効果を生み、研究がより良いものとなっていきます。また、こうした地域の大人とのつながりは、地元に対する誇りをもつこと、自己有用感を高めるこ とにも寄与しているようです。
▲ 課題研究のフィールドワークの様子
地域探究には私の赴任以前から力を入れていたようです。しかし、生徒によって能力やモチベーションにばらつきがある中、どうしても教員主導になってしまう場面が少なくありませんでした。そこで探究活動を改善するために他校を視察させていただきました。宮崎県立飯野高等学校ではフィールドワークや外部との連絡のハードルを下げることで、生徒が自走する環境づくりをされていました。埼玉県の筑波大学附属坂戸高等学校では、前述した一人ひとりに企画を考えさせ、企画書を作らせる取り組みをされていました。これらの高校では生徒が生き生きと探究に取り組んでおり、探究の理想の姿だと感心させられました。
そこから同僚の先生方と協力し、前述の2点を重視した探究活動の改善に取り組みました。その成果もあり、県内の総合学科の高校が集う課題研究発表会では令和4年から6年まで3年連続最優秀賞を受賞。また、昨年度(令和5年度)の3年生は「ミライ企業Nagasaki推進事業」において優秀賞を受賞し、賞金100万円を獲得しました。昨年度、3年生を対象に実施したアンケートでは「自分の成長につながったと思う時間はいつですか?」という質問に対して、「3年間のキャリア学習」と答えた生徒が非常に多く、生徒にとって充実した活動ができているという実感をもつことができました。
しかし、まだまだ生徒が自走してくれない、考えたり活動したりする時間が足りないといった声が上がっています。そこで、令和7年度の入学生からカリキュラムを大幅変更し、探究の時間をこれまでの週1時間から週3時間に変更することにしました。今後は生徒に試行錯誤する時間を増やし、楽しく、充実した学びになるようにサポートしていきたいと思います。
私からアドバイスというのは大変おこがましいですが、探究を進めるためには同僚の先生方の理解と協力が不可欠だと思います。本校の先生方はとても協力的で、職員室でもお互いに担当している班について日常的に相談し合っています。日々の業務に追われ、なかなかゆっくりと話ができないといわれる先生も多いとは思いますが、新しい発想を生むためには余裕を作ることが必要だと私は考えます。まずは隙間時間のコミュニケーションを意識されてみてはいかがでしょうか。
最後に、今回の寄稿のご縁をくださった長崎県立口加高等学校の冨永紘平先生にこの場をお借りして御礼申し上げます。冨永先生は、課題研究の企画発表会の相談をしたところ、座談会形式での発表を提案くださったアイデアマンです。お互い野球部の顧問で、現在連合チームを組ませていただいています。冨永先生、このような機会をありがとうございました。
長崎県立島原翔南高等学校
https://www2.news.ed.jp/section/shounan-h/
Institution for a Global Society株式会社