第8回:田中理紗先生(東京都・かえつ有明中・高等学校 教諭)

 

本校は1903年に「私立日本女子商業学校」として嘉悦孝氏により創立された日本で最初の女子を対象とした商業学校です。2006年に現在の江東区東雲に移転し、かえつ有明中・高等学校として新しいスタートを切り、国際生の受け入れや当時はまだ一般的でなかった探究に取り組むためのオリジナル科目であるサイエンス科を開設しました。

 

本校では開校時から中学のサイエンス科で探究するためのスキルやマインドについての授業を展開。当時はまだ教科横断的な側面が強かったのですが、さまざまな試行錯誤とリニューアルを重ね、「思考する」「探究する」「学ぶ」ためのスキルとマインドを育成する取り組みに発展していきました。

 

現在はそれに加えて社会性と情動の学習(Social Emotional Learning)を基盤とし、さらに進化を続けています。高校では「高校新クラス」というクラスを筆頭に、従来型の授業や受験教育に一切とらわれない、探究を中心にしたクラスも設定し、プロジェクト科という独自科目も展開。生徒はそれぞれの興味や関心に従い、思い思いのプロジェクトに取り組んでいます。

 

本校の授業の展開において、要となっているのは、担当している教員集団とそれを支える仕組みです。本校では担当教科にとらわれず希望する教員が本校の探究のベースとなる中学サイエンス科・高校プロジェクト科を担当します。そのため、担当者は全専任教員の半分以上を占めます。その担当者全員対象の研修を必ず週1回実施。研修では生徒に必要なスキルやマインドについてともに学んでいます。そのため、デザイン思考やシステム思考、マインドフルネスをはじめとする最先端の取り組みについて学び、授業に取り入れることができています。教員が学び続ける姿勢を学校内外で示し続けることがとても大切だと感じています。

 

サイエンス科・プロジェクト科の授業は4月の時点で何に取り組むかを明確に決めていないことが多いです。そのときの担当者が目の前の生徒を見て、取り組みを考えたり、思い切って手放したりすることもできるように、余白を残すということを大切にしています。これは、目の前の生徒やそのときの教員集団の状態を大切にしてほしいということだけでなく、教員が与えられたカリキュラムをこなすという状態になることを避け、自分事として考えることにもつながると感じています。先ほどご紹介した本校の研修は外部にもオープンにしているので、多くの教育関係者が見学にいらっしゃいます。ぜひ、気軽にご連絡いただき、本校に遊びにいらしていただけるとうれしいです。

 

Institution for a Global Society株式会社 教育事業部